国民の義務に関する憲法

【自由及び権利の保持義務(12条)
この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

”不断の努力”というのは、絶え間なく努力し続けること。国民は、国家を運営する者たちの権力によって、自由や権利を侵害されることのないよう努力しなければならない、ということです。また、この権利を濫用せず、公共の福祉のために利用する責任がある、と規定しています。

”公共の福祉”というのは少し難しいのですが、「国民の人権」というようなイメージでいいと思います。例えば、人権と人権とがぶつかり合った場合、ある一定の公平なルールに従ってその衝突を調整していかなければなりません。AさんとBさんが言い合いになった場合、それぞれ少しずつ妥協してもらいトラブルを解決へと導いていく。つまり、相手(他の人)の人権を尊重することでもあるのですが、国民の人権を守っていくにはある程度一定の制約もありますよ、ということです。


【教育の義務(26条2項)
2項 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

→教育は、個人の人格形成、および幸せに暮らしていくために必要なものとして、国は教育を受ける権利を認めていますが(1項)、他方、これを義務としても定めています(2項)。

また、経済面などで教育を受けることができない国民がいないよう、義務教育の無償を保障しています。


【勤労の義務(27条)
すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。

→国は、働く意思や能力がある人に対し、勤労の権利を与えています。また、「義務を負う」というのは強制的に働きなさいと言っているのではなく、働く能力がある者は、働く意思を持って一生懸命仕事して生活すべき、というようなことを示しています。


【納税の義務(30条)
国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。

→国民は、国に対して税金を納める義務があります。税金は、国民に対して行われる国の様々な活動、行政サービスなどに必要不可欠な財政源です。

参政権

【参政権(15条)
公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。

2項 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。

3項 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。

4項 すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。

→憲法15条では、政治に参加する権利について規定した条文で、1項では「選挙権」について明記しています。また、3項に「普通選挙を保障する」とありますが、これは性別や収入、教育などによって選挙権の有無を差別されるものではなく、すべての国民に与えられていることを意味しています。

ちなみに、この普通選挙と混同しがちなのが「平等選挙」です。平等選挙は、1人1人が投票した選挙の価値が平等である、つまり選挙権に差を設けてはいけません、という意味です。

そして4項では「秘密選挙の原則」を規定しています。これは、投票者が誰に投票したのを秘密にするというものです。こうすることによって、投票者が自由な意思に基づいて何らかの制約を受けることなく投票できるということを保障しています。

受益権

【請願権(16条)
何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

→「請願」というのは、国や地方公共団体に対して意見や要望などを述べる行為をいいます。どんな人でもこの請願権を有しており、これは未成年者や外国人にも保障された規定です。


【国及び公共団体の賠償請求権(17条)
何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。

→憲法17条で規定している損害に対しては、国家賠償法が具体的に定めています。従って、公務員の不法行為により損害を受けたときは、国家賠償法によってその賠償を求めることになります。


【裁判を受ける権利(32条、37条1項)
(32条)
何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。

→憲法では、裁判を受ける権利を人権として保障しています。

(37条1項)すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。


【刑事補償(40条)
何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。

→どんな人であっても、無罪の場合は、抑留や拘禁により被った損害の補償を国に対して求めることができます。「法律の定めるところにより」というのは、刑事補償法で具体的に定めているということです。

社会権

社会権とは、国民が国家に対して、個人の生存や生活維持など一定の要求を求める権利をいいます。「国家による自由」とも呼ばれ、資本主義経済の発達による貧富の差を是正するため、また社会的な弱者を救済するために定められた条文です。(一方で、自由権は「国家からの自由」と呼ばれています。)


【国民の生存権(25条)
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

2項 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

→憲法25条では、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営む権利があるとし、すべての者に対し保障されるべき制度として規定しています。


【教育を受ける権利(26条1項)
すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。

2項 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

→教育は、個人の人格形成、および幸せに暮らしていくために必要なものとして、国は教育を受ける権利を認めています。


【勤労の権利(27条)
すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。

2項 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。

3項 児童は、これを酷使してはならない。

→国は、働く意思や能力がある人に対し、勤労の権利を与えています。また、「義務を負う」というのは強制的に働きなさいと言っているのではなく、働く能力がある者は、働く意思を持って一生懸命仕事して生活すべき、というようなことを示しています。

※3項のみ、私人間にも直接適用が可能です。


【労働基本権(28条)
勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

→使用者よりも不利な立場である勤労者に対し、団結する権利や団体行動する権利を与えることで、使用者と対等な立場に立てるようにしました。

※憲法28条は、私人間にも直接適用が可能です。

身体的自由権

【奴隷的拘束・苦役からの自由(18条)
何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

→どんな人であっても、身体を拘束され人権を無視したような状態に置かれることは許されないとしています。これは、本人の同意や犯罪による処罰に関係なく禁止されています。

また、本人の意に反して強制される苦役(苦痛を感じるような役務)についても原則禁止されていますが、犯罪による場合は例外的に許されています。

※憲法18条は、私人間にも直接適用が可能です。


【法廷手続の保障(31条)
何人も、法律の定める手続きによらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

→憲法31条では、人身の自由は「法の適正な手続」によって保障されています。これは、”法律の定める手続きによる”という条文の規定だけではなく、法律の手続きや内容そのものも適正でなければならないとされています。また、この条文は罪刑法定主義の根拠であると解されています。

※罪刑法定主義=ある行為を犯罪として罰するために必要な法令で、どのような行為が犯罪にあたるか、どの行為に対してどのような刑罰にするかなどを明確に規定しておくこと。


【不当な逮捕からの自由(33条)
何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

→どんな人でも、逮捕する場合には必ず令状がなければ逮捕できないと規定しています。現行犯逮捕や緊急逮捕は例外です。

※司法官憲…裁判官のこと。


【不法な抑留・拘禁からの自由(34条)
何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護士に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及び弁護士の出席する公開の法廷で示さなければならない。

→抑留や拘禁は、人身の自由に対して重大な障害があるため弁護士を依頼する権利が与えられています。また、拘禁に対しては、公開の法廷で「正当な理由」の開示を要求することが保障されています。

※抑留…一時的に身体を拘束すること。
※拘禁…継続的に身体を拘束すること。


【居住などの不可侵(35条)
何人も、その居住、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。

2項 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。

→居住、書類及び所持品については、令状なく勝手に侵入や捜索、押収をしてはならないと規定しています。これは、国から国民の人権を守るために定められているものです。

ただし、憲法33条にある「令状による逮捕」は例外となっています。


【刑事上の権利(36~39条)
(36条)公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

※残虐な刑罰…必要以上に精神的、肉体的に苦痛を与える残酷な刑罰。ちなみに、絞首刑は残虐な刑罰に該当しないとされています。

(37条)すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。

2項 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。

3項 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。

(38条)何人も、自己に不利益な供述を強要されない。

2項 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。

3項 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

(39条)何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。

→憲法36条~39条では、被告人の権利を保障するために規定された条文です。刑罰は、人の自由を奪う重大な侵害のため、裁判が公平であること、弁護人を依頼することができること、黙秘権の保障、二重処罰の禁止などを定めています。