消滅時効

【民法第167条】
債権は、十年間行使しないときは、消滅する。

2項 債権又は所有権以外の財産権は、二十年間行使しないときは、消滅する。

<消滅時効とは>
消滅時効とは、一定期間ある状態が続いていた場合に、有していた権利が無くなる(消滅する)ことをいいます。消滅時効の要件をまとめると、以下のとおりです。

1.ある状態が一定期間継続していること。
2.途中、時効が中断されていないこと。
3.援用があること。

一般的な債権は、民法第167条にあるように10年で消滅時効にかかります。ちなみに、商行為の場合の債権は5年です。

同条2項にある「債権又は所有権以外の財産権」というのは、例えば地上権や永小作権、地役権などを指します。もちろん、所有権は消滅時効の対象ではありません。自分の物(バイクなど)をずっと使わなかったら時効で自分のものでは無くなってしまう、なんてことにはならないですよね。

また、消滅時効の要件のひとつとして「時効中断されていないこと」とありますが、この中断事由としては、例えば債権者からの催告や裁判上の請求があること、もしくは債務者自らが「債務がある」と承認してしまうこと。これらの行為がひとつでもあると時効は中断されてしまいます。

<消滅時効の効果>
仮に、AさんがBさんからお金を借りていた場合、時効が完成するとAさんはもはやそのお金を返さなくてよくなります。つまり、Aさんの支払義務がなくなるということです。当然、Bさんも「お金を貸して」と言えなくなります。


【民法第166条】
消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。

<消滅時効の起算点>
消滅時効の起算点は、民法第166条に規定しているとおりですが、対象となる債権の種類によってまちまちです。その一部を以下に挙げます。

・確定期限もしくは不確定期限のある債権 → 期限の到来時が起算点
(例1)3/31が返済期限であれば3/31が消滅時効の起算点となる。
(例2)Aさんが死亡したら…という不確定期限の場合は、Aさんが死亡したときからが起算点となる。

・債務不履行にもとづく損害賠償請求権 → 本来の債務の履行を請求できるとき

・期限の定めのない債権 → 債権の成立時

取得時効

【民法第162条】
二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。

2項 十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

<取得時効とは>
取得時効とは、平穏かつ公然と他人の者を一定期間占有した場合、その所有権を取得するものです。取得時効の要件をまとめると、以下のとおりです。
1.他人のものを所有の意思を持って占有していること。
2.平穏かつ公然と占有していること。
3.占有が一定期間継続していること(善意10年、悪意20年)。
4.援用があること。

「平穏かつ公然」というのは、盗んだものや拾ったものではないという意味です。また、「占有」というのは、あくまでも「自主占有(自分のものとして占有していること)」であり、「他主占有(賃貸などのように他人のもの、借りているものという意思)」ではありません。

<取得時効の効果>
取得時効による所有権の取得は、「原始取得」として扱われます。原始取得というのは、例えば取得した建物に抵当権が設定されていた場合、その抵当権が消滅するというものです。

また、時効には遡及効があるので、占有を開始した日から権利を有することになります。

<占有の承継>
占有は承継することができます。例えば、ある土地を占有していたAさんの後にBさんがその土地の占有を引き継いだ場合、Aさんの占有期間を含めて取得時効を主張することが可能です。

ただしこの場合、BさんはAさんの持っている瑕疵も承継することになります。つまり、Aさんがもし悪意であれば、その悪意も承継するため取得時効を主張するには占有期間が20年必要となるのです。

時効について

<時効とは>
時効とは、ある事実状態が一定期間続いた場合に、その状態が真実かどうかに関わらず、事実状態に権利関係を合わせることをいいます。

例えば、他人の土地について、あたかも自分のもののような状態が一定期間継続した場合、他人の土地であっても「自己のものである」と主張することができます(取得時効)

また、お金の貸し借りについても、債権者がいつまでも返済を請求しない状態が一定期間継続した場合、借りたお金を返さなくてよいことになったりします(消滅時効)

本来であれば実際の権利関係を尊重し、それに従った状態にすることが正しいと思われますが、時効では”事実関係”を優先します。なぜこのような制度があるのでしょうか。それには以下のような理由があるとされています。
1.過去の事実に対する証明困難性の救済
2.一定期間継続されている事実状態の尊重
3.権利の上に眠る者は保護しないという考え


 【民法第145条】
時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。

<時効の援用>
時効は一定期間経過していることが必要ですが、それだけでは時効完成とはなりません。時効の利益を受ける者が、時効を受けるという意思表示をする必要があります。この意思表示をすることを「時効を援用する」といいます。

つまり、時効は一定期間の経過で自動的に取得もしくは消滅するものではなく、時効の利益を受ける者が、時効を受けるかどうかを選択することができるという仕組みになっています。

これは、時効の利益を受けたくない場合に有効となります。例えば、ある債務者がお金を借りたまま一定期間経過したあとにおいても(時効期間が経過したあとにおいても)、債権者への恩があり時間をかけて返済したいと思っている場合などが該当します。


【民法第146条】
時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。

<時効の利益の放棄>
時効の利益は、それを放棄することもできます。具体的には、「時効を受けない」という意思表示をすることですが、これは、民法146条にあるように、前もってではなく”時効完成後”に行うことができます。


【民法第147条】
時効は、次に掲げる事由によって中断する。
一 請求

二 差押え、仮差押え又は仮処分
三 承認

<時効の中断>
時効の中断とは、一定の事由が生じた場合、それまで進行していた時効期間が中断されることをいいます。例えば、2年経過していた時効期間が、ある事由によりゼロになる、つまりリセットされることになります。

時効が中断となる事由については、民法147条に規定されています。また、取得時効についてのみ「占有の喪失」という事由についても中断します。


<時効の停止>
時効の停止とは、時効中断することが難しい事情(自然災害など)がある場合、一定期間だけ時効の完成を猶予することです。中断はそれまでの期間がゼロになるのに対し、停止は一時的に止まるのみで、停止期間が過ぎれば再び進行します。

自己契約と双方代理

【民法第108条】
同一の法律行為については、相手方の代理人となり、又は当事者双方の代理人となることはできない。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

民法108条は、「自己契約」「双方代理」について規定された条文です。ここでは原則、どちらも無権代理行為として「できない」と定められています(無効ではありません)。

<自己契約とは>
例えば、本人Aさんから「私の土地を売ってきて欲しい」と依頼を受けた代理人が、自らその土地を購入するような場合です。こういった行為を原則禁止としているのは、本人Aさんの利益を害する恐れがあるからです。

代理権には、価格交渉する権利も与えられているため、Aさんの土地を安くすることも可能です。それでは、Aさんが不利益を受けてしまいますね。

<双方代理とは>
これは、当事者双方の代理人が同じ代理人となる場合をいいます。例えば、ある代理人が、Aさんから「土地を売ってきて欲しい」という依頼と、Bさんから「その土地を買ってきて欲しい」という依頼の両方を受けていた場合などが該当します。

この場合、代理人が当事者のどちらかに不利益な形で価格を決定してしまう可能性などがあるので、原則禁止されています。

<自己契約と双方代理の例外>
民法108条のただし書きにあるように、下記の場合は例外的に有効とされています。
1.債務の履行
2.当事者本人があらかじめ承諾した場合

「債務の履行」というのは、既に決定されている債務に対して「履行するだけ」の話なので、誰も不利益とならないからです。

表見代理

【民法第109条】
第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。

【民法第110条】
前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。

【民法第112条】
代理権の消滅は、善意の第三者に対抗することができない。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。

<表見代理とは>
表見代理は無権代理の一種と言われていますが、相手方が、代理権があると信じた無権代理人との取引において、本人にも何らかの落ち度が考えられる場合に、相手方を保護するためその取引を有効なものとし、本人に効果帰属するような場合をいいます。

<表見代理の要件>
表見代理には、以下の3つの要件があります。
1.代理権授受の表示
2.権限外の代理行為
3.代理権消滅後の代理行為

それぞれの要件を例えてみると…
本人Aが相手方Cに対し、実際には代理権を与えていないのにも関わらず、「Bに代理権を与えた」と言った場合(1.代理権授受の表示)
本人Aが代理人Bに対し「100万円のものを購入してきて欲しい」とお願いしたにも関わらず、500万円のものを買ってきてしまった場合(2.権限外の代理行為)
過去に代理権を与えてられていたことのあるBが、今でも代理権があるものとふるまい相手方Cと取引をした場合(3.代理権消滅後の代理行為)
などが表見代理に該当します。